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連載小説|第四回目|青い瞳は虚空を見つめる

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Act.1 青い瞳は地面を見つめる ④

※この物語は連載小説です。こちらは第四話となります。
前回 第三話はこちらから👉️【第三話:青い瞳は虚空を見つめる】
   第二話はこちらから👉️【第二話:青い瞳は虚空を見つめる】
   第一話はこちらから👉️【第一話:青い瞳は虚空を見つめる】

※本作品には、軽度のホラー表現や不穏な描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。

もう辺りは、ぼんやりと暗闇に包まれてきていた。

夕暮れ。
見知らぬ場所の公園。

”ちゅ~るん”片手に黒猫と戯れる美女が一人。

なんか、絵になる。


『現実に返ってきてください。』

携帯電話からの突っ込み。

相変わらず、空気読まない奴め。

「最初から現実にいるわよ。」
『いえ、また、妄想の世界にいる顔をしていましたから…。』

どういうことよ。
なんで、「また」なのよ。

まあ、いいわ。
いちいちAIに突っ込んでいたら疲れるだけだし。

そんなことより、これからどうしよう。

私は、しゃがみ込んだ足元にいる黒猫に目を落とした。

差し出している”ちゅ~るん”を、一生懸命舐めている。

初めは警戒していた黒猫だったが、”ちゅ~るん”の匂いに、欲望が抗えなかったらしい。
ソロソロと近づいてきて、私が開封したスティック状の先端の匂いを嗅ぐと、少しだけ出した餌をペロリと舐めたのだ。

ふふ。
そうでしょうね。

やはり、プロから仕入れた情報は正しい。

このまま手懐けて、油断したところをガバッと…。

いや、この猫ちゃんではないのだったわ。

一応、白雪の使っていたケージも借りてきている。
この中にはぬいぐるみも入っているし、白雪なら大人しく入ると思う。
たぶん。

何か、手がかりが見つからないかしら?
この黒猫ちゃん、何か知らないかな?

私は、以前、聞いたことを思い出した。

猫たちは意外と近所付き合いをするという話だ。
縄張り意識が強く、群れをつくらない孤高なイメージのある猫。

だがじつは、猫の集会場というものがあり、そこに集まって何やら話し合いをしている事もあると聞いた。

井戸端会議かよ!と、笑ったが、もしかしたら…。

「黒猫ちゃーん。今日は猫会議しないの~?」

私は、先のない状況を打破するために、黒猫に話しかけてみた。

”ちゅ~るん”をあげた恩を感じてくれるかもしれない。
どうせ、このままだと今日は帰るしかないし。

私は、”ちゅ~るん”を差し出したまま、反対の手で白雪の写真を取り出した。
黒猫の目の前に差し出す。

「この猫ちゃん、探しているのよ。
名前は白雪ちゃん。美人でしょ?見たことない?」

なんてね。
猫相手に聴取してみたりして。

『………。』

あっ!
何だか、今、携帯電話から不穏な気配を察知したわ!

ついに猫相手に語りはじめた…とか、思ってるんじゃないでしょうね?
呆れてるんじゃないわよっ、ケット!

その時、黒猫が、”ちゅ~るん”を舐めていた動作を止めた。

写真を眺める。
そして、じっと私の目を見つめた。

黒猫の瞳は、澄んだ深い水の底のように透き通った青い色をしている。
見つめられると吸い込まれそう。
綺麗な瞳だった。

「猫の目って綺麗だね~。青い色が宝石のようだわ。」

すると、黒猫はスタッと立ち上がった。

ゆっくりと離れていく。

「あれ?もういらないの?」

私は、もう立ち去ろうとしているんだと思った。
でも、黒猫は数歩離れると、こちらを振り向いた。

なんだか、ついてこい…と言っているように感じた。

「え?まさか?ほんとに知ってるの?白雪ちゃんのこと?」

私は、目を見張って黒猫をみた。
黒猫は表情を動かさず、黙ってこちらを見つめている。

私はフラフラと立ち上がり、黒猫の方へ足を踏み出した。

黒猫はゆっくりと、そして、私を導くように歩きはじめた…。

illustration:niji・journey&Nano Banana



***

辺りはすっかり暗闇となった。

私は黒猫の後を追うように歩いていた。

黒猫はマンションの裏側に回り込み、崖の方へ向かっている。

依頼人の姉である彩織さんの住んでいるマンションは、新興住宅地に新しく建てられた新築のマンションだ。
辺りは建築途中の物件が多く、土地の開発も進んでいる最中。
このマンションの裏手は山になっていて、崖を切り崩し、土地を広げている最中のようだった。

黒猫は、その工事箇所を抜けて、まだ手のつけられていない雑木林に向かっていた。

道はあるが、舗装もされていない山道になっている。
なだらかな上り坂に、申し訳程度の街灯が立っていた。

足元がおぼろげになり、歩きにくい。

しかし、黒猫は付かず離れずの距離で前を進んでいく。

私は、なぜか、逆らえない”何か”に連れて行かれている様な感覚に陥っていた。

ただ黙って、黒猫に従う。
足が勝手に前に進んだ。

(ここはどこだろう。)

暗闇が思考を奪っているようだった。

(私は何をしているんだ。)

ふと、もう帰ろうかと思った、その時だった。

黒猫が消えた。

「!?」

慌ててあたりを見回す。

前を歩いていたはずの黒猫が、突然消えたのだ。

いや、黒いから見失っただけだろう。
どこか、その辺りに…。

——にゃーん。

猫の鳴き声が空間に反響した。

雑木林の中。

右手奥から聞こえたようだ。

私は携帯電話を取り出して、画面のライトを付けた。
周りの景色が光で浮かび上がる。

木々の奥。

少しだけ空き地のような空間があった。
その先にほんのりと白い光が浮かび上がった。

(え?なに?)

目を凝らす。

じっと見つめていると、その白い光は座っている猫の姿になった。

(あれ?猫?白猫?)

私は、心臓が高鳴った。

まさか、探していた「白雪」なのか?

私は意を決して、雑木林の中に足を踏み入れた。
黒猫は見当たらない。

でも、今は白雪かもしれない猫のほうが重要だ。

怖がらせないように。
慎重に…。
ゆっくりと…。

歩を進める。

その姿がはっきりする距離まで近づいた時、それは、白雪だとわかった。

写真の通りの姿である。

真っ白な長毛。
薄い青空色の目の色。

白雪は私の方を黙って見つめていた。

大人しく、しかし、凛とした佇まいで座っている。

(間違いない!)

私は心の中でガッツポーズをした。

初任務の成功が目の前にいるのだ。
興奮しないわけがない!

私はカバンから”ちゅ~るん”と、もうひとつ、ケージの口を開けて白雪のぬいぐるみを取り出した。

荷物を地面に置くと、中腰の姿勢で、じわじわと白雪ににじり寄っていく。

「しらゆきちゃ~ん。怖くないよ。ほら、お姉さんのぬいぐるみだよ。」

右手に持ったぬいぐるみをふりふりしながら、反対の手で開封した”ちゅ~るん”を差し出し、その匂いを振りまいてみた。

白雪は、少し目を細めて、ぬいぐるみを見つめているようだった。

なんだか、懐かしそうな顔をしている。

猫もこんな表情するんだな…。

しかし、ふいっと顔を背けると、立ち上がって、歩き出してしまった。

私は慌てた。

(ここで逃がしてなるものか!)

一瞬、飛びかかろうかと身構えた時…

白雪が地面から飛び出している、白い何かを舐め出した。

最初は、舐めているものが何だかわからなかった。

次に、キノコかと思った。
地面から生えて先が広がっている。

白…というより、肌色に近いような…。

「そ…そんな、馬鹿な…。」

先端が5本に別れている。

最後に、それは、人間の手に見えた。

illustration:ChatGPT

次回、ペット探しの依頼がとんでもない方向へ進展。ChatGPTに依頼した画像が怖すぎて、白黒に加工したよ〜(-_-;)。

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